“来歴不明”
ある船で機器にトラブルが発生したとき、その機器の来歴が不明ということが判明して、問題視されました。来歴とはその機器の今までの歴史、生い立ちであり、いわゆる機器の整備記録や修理記録のことです。どんな機器も壊れることがあります。壊れたときにどの部分がどのように壊れて、どの部品を取り替えて、どのように修理して、どのように運転しているか等々の記録を来歴簿(来歴記録)に残しておき、故障発生時に過去の経緯を調査したり、日頃の運転・保守管理方法の参考にしたりするときに有効活用します。
この来歴が不明では、過去のトラブルや修理の内容がわからず、有益な参考情報を入手できないため保守整備に支障をきたします。今まで一度も壊れたことがないならば話は別ですが、過去に壊れたことがある場合は必ず来歴記録があるはずです。来歴記録を維持するためには、歴代の担当者の継続的で小まめな記録が必要で、担当者がさぼって記録するのを怠ったり、忘れてしまっては、この重要な来歴記録を維持できません。皆さんの船の航海機器や甲板・荷役機器の来歴記録は適切に管理されていますか?
“承認”
「承認」は英語では「Approval」ですが、「承認」にも様々な承認があります。IMO承認、旗国承認、Class承認、型式承認(かたしきしょうにん)、会社承認、船長承認、上司承認等々。それぞれの責任・権限ある立場の人がいわゆるお墨付きを与える作業が承認です。承認される例をあげれば、Class承認印(Approval Stamp)がある図面、会社承認のGas Free Operation Manual(ガスフリー作業手順書)等です。Fire Control Planの消火設備の記載事項に変更がある場合にはClassに訂正の承認を依頼して図面の改訂部分に承認印を押してもらう必要があります。
もっとも最近は、船長サインでOKとする場合も多いようです。また、EDP(Early Departure Procedure)を採用する場合、船長は「Authorization Letter」に承認のサインをして、代理店に出港後、船長の代わりに荷役書類にサインする権限を与えます。承認印が有る無しで、書類や図面の価値・意味がまるで異なってくるので、承認については十分に注意しましょう。