おそらく多くの船員が文章作成を苦手としていると思います。その『文章の書き方』の話です。
船員はよく「了解」という言葉を使います。メールの文章にも「了解しました。」と書く人が多いのではないでしょうか。陸上のある人に「船員さんはよく“了解”という言葉を使いますね。」と言われたことがあります。陸上では「承知しました」という言葉をよく使うそうです。広辞苑で調べてみると、「了解」は「さとること」「会得すること」となっています。「承知」は「うけたまわること」となっています。「承知」を使って「合点、承知之助」といったおどけた言葉もあります。
同じような2つの言葉ですが、「了解」には理解しましたという意味が込められ、「承知」には承りましたという意味が込められているのです。ですから、「受け止めました。」「受け取りました。」という意味を相手に伝える場合は、私達が何気なく使っている「了解」ではなく、「承知」を使用したほうが無難です。「了解」は上官から言われた命令を理解しましたという意味で軍人が使用するようなイメージがあります。意味的には「了解」と「承知」のどちらを使っても良いのでしょうが、私は状況によっては意識的に「承知」の方を使うようにしています。
「査収下さい」もよく使う言葉ですが、意味は「よく調べた上で受け取ること(Check and Receive)」です。相手によく調べて受け取って下さいと言うのもおかしな話かもしれませんが、何かのデーターや相手に依頼されて送付するときには、「査収」という言葉が適当かもしれません。「受け取ってから中身を見て下さい。」という意味の「ご査収下さい。」です。
次に「及び」についてですが、文章を書くときにしばしば「及び」を使います。「及び」の前に読点「、」をつける人を時々見かけますが、私が知る限りでは「及び」の前には「、」をつけません。理由は「及び」がすでに語句の切れ目を表しており、既に「、」の意味が「及び」に含まれているからです。昔、若い頃に先輩にそう教えてもらいました。そして今でもそれを忠実に守っています。何気なく書いている日本語の文章ですが、今紹介した以外にも使い方が間違っていたり、注意を要したりする言葉がたくさんあるはずです。
学校で「文章の書き方」を習ったことがあると思いますが、良い文章は「起承転結」の順番で書かれていると習ったはずです。しかし、それは小説やエッセイのような長文で、人がじっくり読む文章の場合です。社内でのメールや報告書は伝えたいことを要領よく、できるかぎり簡潔に書く必要があります。
従って社内メールや報告書は「起承転結」ではなく、「起結承転、そして最後に再び結」で書かなければいけません。最初の3、4行内で、結論を含む「起結」に該当する内容を書いて、読む人にその文章の概要や何を伝えたいかが判るようにします。そして、次に経緯、説明や根拠として「承転」に該当する部分を書きます。そして最後に、強調すべき依頼事項や連絡事項で結んで文章の終わりとします。
結論が最後にしか書かれていない文章では、読む人は最後まで何が言いたいのかさっぱりわかりません。読むのが途中でいやになるかも知れません。長文でだらだら書いてしまうと、伝えたいことや結論がぼやけてしまいます。冒頭に骨子や結論が書いてあれば、その後の文章で経緯や説明を理解しやすくなり、読む人にとって非常に読みやすい文章となります。
読んでもらう相手に自分の意図する内容をしっかり伝えたい場合には、冒頭でそれを述べたあと、さりげなく最後の部分でも異なる表現で繰り返しておけば、相手に確実に伝わります。これは文章を書くテクニックです。皆さんも読みやすい、伝わりやすい文章を書くように心がけて下さい。