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右舷と左舷、ともとおもて、どちらが優先?

『船の前後左右』の話です。

右舷が先か?左舷が先か?日本の船では右舷優先です。救命艇、各種ポンプ、タンク等全て原則として右舷側からNO.1、NO.2と順番に番号を付けます。右舷から番号を付けることは商船学校でも学びましたから、古い日本海軍の時代からの習慣なのかも知れません。しかし、国によっては左舷から番号を付ける国もあります。

英語でも「PORT AND STARBOARD」と言っても、「STARBOARD AND PORT」とは決して言いません。ですから、外地ドックで外国人の作業員が行う修理には注意が必要です。うっかりすると左右逆側のポンプやタンクを間違って修理していたなんて笑い話のような事態も発生することもあります。確かに、欧米仕様の船に乗船したことがありますが、左舷側から番号を付けていました。あるLNG船の救命艇は間違いなく左舷側が1号艇、右舷側が2号艇でした。

ひょっとして車のハンドル位置と関係しているのかも知れません。車が右ハンドルの国は日本、イギリス、オーストラリア等で意外と少なく、殆どの国では左ハンドルです。ですから車が右ハンドルの国は右側優先で左ハンドルの国は左側優先なのかも知れません。ちなみに、IALA海上浮標式においてブイの色に関しても世界が二分されており、アメリカ合衆国は“RED LIGHT TO STARBOARD”ですが、ロシアは”RED LIGHT TO PORT”を採用しており、緑灯と赤灯の位置が逆になります。

さらに船の「とも・おもて」という呼び方についても、日本では船尾を先に言ってあまり「おもて・とも」とは言いません。これはとも・おもてのほうが言い易いから、ともを先に言うのでしょうか。しかし英語では必ず「FORE AND AFT」であり、「AFT AND FORE」とは言いません。残念ながら英語での”PORT AND STARBOARD”、”FORE AND AFT”が世界の常識であり、日本語の「右が1番、左が2番」、「とも・おもて」が世界の常識には成り得ないのです。もちろん日本語にも前後左右という言い方もありますが・・・・・混乱を避けるために、あらゆる分野で左右の優先順位を世界統一にすれば良いのでしょうが、簡単な話ではなさそうです。

ところで、船体構造の場所をあらわすフレーム番号 (FRAME NUMBER) は船の住所番地のようなものです。タンク内の凹損が発生した場所を記録するときにフレーム番号で記録すれば、あとで図面で場所を見るときに楽です。タンク内は暗く、どこも同じような構造で特徴がないことが多く、不具合箇所の位置を記録するのに苦労します。

そういうときにはフレーム番号が判れば、あとから図面と簡単に照合することができます。当然のことですが、船首構造や船尾構造ではフレーム間隔が狭くなっており、特に船尾構造部のフレーム間隔が狭くなっています。例えば大型LNG船では船首部のフレーム間隔は3M、船体中央部分4.5M、船尾部1Mとなっています。

このフレーム番号が船尾から船首へ向けて番号が付けられていることを皆さんは当然知っているでしょう。これは昔から船を建造するときは船尾から造るため、船尾からフレーム番号を付けるためです。しかし、最近インドネシア人の若い航海士に「フレーム番号は船首、船尾のどちらから順番に付けられているか?」と尋ねると自信ありげに「船首から」と答えました。

てっきりインドネシア人航海士が何も知らないで当てずっぽうで答えているのだと思っていました。しかし、その後、ロシア人航海士から聞いたのですが、ロシアの船では船首からFRAME NUMBERが付けられているそうです。まさに世界は広し。さらにロシア人航海士の話ではトリムの符号も日本とは逆で、船尾トリム(BY THE STERN)のときにマイナス(-)として計算するそうです。日本の場合はトリムをDA-DFで求めるので 船尾トリムのときには符号はプラス(+)となります。これも国によっては逆となるのです。世界は広し、私達日本人船員や日本船が常に正しいとは限りません。

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