日本人の主食である『お米』の話です。
私が乗船していたある船での出来事です。いつも同じ航海日数の定期航路に就航している船が、一航海だけスケジュールが変更となり、通常より数日間長い航海になりました。その航海の中頃になって突然、何の前触れもなくChief Stewardが「次の食料補給できる港に着く前に米の在庫が無くなる。」と報告してきました。例によって食材が無くなってから、あるいは無くなることがわかってから騒ぎ出すというお得意のパターンです。
この突然の報告は食料に限りません。同様なことは船用品でも起こります。ペイントが無くなる、トイレットペーパーが無くなる等々無くなるのがわかってから騒ぎ始めるのです。インドネシア人やフィリピン人の慣習なのでしょうか?日本人のように日頃の消費実績から綿密な計画を立て、早めに消費量・在庫量を調整するということができません。中には、日本人にひけをとらないほど上手に管理できる外国人もいますが、概ね外国人Cateringには在庫管理が不得手な人が多いのです。
毎航海、同量の日本米を補給していましたが、今回は航海日数が長くなったため、当然それに見合った量を増やして注文補給すべきでしたが、Chief Stewardが何を勘違いしたのか、うっかりミスなのか、お米の量を増やさずに注文していました。
また、別の船では通常の10日航海が15日航海となり、食材も1.5倍積み込んで出港したのに次の港に着く3日前には食材が底をつき始めました。Cateringが多く積み込まれた食材を計画性もなく、どんどん消費してしまった結果です。日本人のCateringならば、最初は様子見で食材の消費量をセーブ気味にしたり、15日間分の食材を均等にうまく配分することができるのですが、外国人Cateringにはその微妙な消費量の調整や日数の長短への対応ができない人が多いのです。
皆さんは船内の米の消費量がどれくらいか、知っていますか?おかげさまで今回の件で私もお米の消費量の目安を覚えました。1日8kgです。(この量は乗組員34名が同じ種類の米を食べると仮定して、少し余裕のある分量)ですから、20日航海だと160kgと直ぐに目安の分量が言えるようになりました。このときは、外地で補給したマレーシア米が少し在庫として残っていたので、それを日本人も我慢して食べながら、節約してなんとか消費量を調整し、米が無くなるという非常事態は免れました。
ちなみに世界のお米は「インディカ米」と「ジャポニカ米」の大きく2種類に分けられます。マレーシア米は粒が長く炊いてもパラパラ、パサパサなインディカ米です。私達日本人が食する米は粒が短く、炊くと粘りのあるジャポニカ米です。日本人にとって不足して困る食材は「米、味噌、醤油」です。世界遺産にもなる和食はこの3種類は欠かすことができません。しかし、不足して困る食材はこれだけではありませんでした。
別の船では航海中に砂糖が不足してもうすぐ無くなると賄いから報告がありました。砂糖も無くなれば大問題です。料理に砂糖は欠かせません。コーヒーに入れる砂糖ぐらいは我慢できますが、料理に砂糖がないと味付けに困ります。重要な食材を切らさないようにするためには、外国人Catering任せにせず日本人船員の目でもときどき在庫量を確かめることが必要です。
こんなトラブルがあるたびに彼らの管理能力の無さに腹立ちとあきらめが入り混じった複雑な気持ちになります。これも時代の流れなのでしょうか、船長みずから米の在庫量まで心配して把握しなければならない時代なのかと空しい気持ちになる今日この頃です。