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航海当直 ア・ラ・カルト(Non-Follow Up・Chart Table・船橋からの距離)

阪口泰弘阪口泰弘

言うまでもなく、『航海当直』は航海士にとって基本中の基本の職務です。それ相応に出来て当たり前、もしも、信用に足るだけの航海当直の技量を発揮できなければ、船長以下乗組員全員から航海士失格の烙印を押されてしまいます。その航海士の「Basic Skill」ともいえる航海当直について焦点を当て、いくつかの初歩的な話を紹介します。

Non-Follow Up

航海士なら誰でも知っている操舵システムのNon-Follow Up機能。出港時の操舵機テストや3ヶ月毎の非常操舵操練で、その機能の確認を行っているはずです。ある船で非常操舵操練を実施したのですが、2/Oが操舵機故障時に取るべき手順について乗組員への説明が終わった後、あるOSにNon-Follow Upに切り替えて操舵をさせました。

すると、意外なことにそのOSは上手く舵を取れません。Non-Follow Upで操舵したことがないのか、舵の動きを上手くコントロールできません。針路をSteadyしようとしますが、船首がどんどん右回頭し始めて定針できません。私達日本人航海士は練習船でNon-Follow Upで舵を取る練習をしているので、通常の操舵と同じように問題なく、操舵できるはずです。しかし、外国人Q/Mの中には、Non-Follow Upの経験が少なく、舵が上手く取れない者が多くいるようです。ですから、是非、機会があれば、Q/MにNon-Follow Upによる操舵を練習させてください。

Chart Table

あるパイロットから言われました。「キャプテン、この頃はこのような船位の入れ方を許しているのですか?」最初は何を言われているのか、さっぱり分かりませんでした。Chart Tableはレーダーの真後ろにあり、航海士が位置を入れるためにレーダーで距離と方位を測って、そのまま後ろを振り返ってChart Tableに向かい、位置を入れていました。この後ろを向いて位置を入れることに問題があるという問い掛けです。

そのパイロットは自分が船長のときは後ろを向いて位置を入れることを許さず、「私が船長のときには、航海士に必ずChart Tableの後ろへぐるっと回って、ときどき前方をLook Outしながら位置を入れるように指導していた。」と言うのです。要は常に航行船等周囲状況に気を配りながら船位を入れるべきであるという考えです。確かにそうかも知れません。しかし、Chart Tableの後ろまでわざわざ回り込み、首を上げてきょろきょろしながら船位を入れるのは、それだけ時間もかかりますし、船位の記入ミスも起こり易いでしょう。

レーダーで測った方位・距離をくるりと後ろを向いて、さっと位置を入れる方が、早くて安全かも知れません。後ろに回って位置を入れるという機敏な動作を要求するのは、日本人ならではのものであり、外国人航海士には到底受け入れることができないと思います。そうは言いながらも、この気配りこそ、日本人航海士ならではのきめ細やかな配慮であり、後輩航海士に是非伝えておきたい航海当直の心構えの一つかなとも感じました。

船橋からの距離

皆さんは本船の船橋からマニフォールド、ギャングウェー、船尾端、船首端までの距離を暗記していますか?錨泊時の本船位置を入れるときには船首方位及び船首ー船橋間の距離を考慮して錨地の位置を決定します。LNG船ではマニフォールドの位置決めのときに船橋ーマニフォールド間の距離を知っておく必要があります。船によっては船橋ウィングに船橋から船首端や船尾端までの距離が掲示している船もありますが、船橋から船首端までの距離ぐらいは頭に入れておきましょう。

また、船首尾配置の航海士より「岸壁まで距離〇〇m」「赤ブイまで距離〇〇m」と報告がありますが、目視による距離は非常に誤差があり、個人差があります。そこで客観的で、目視より正確な距離をレーダーやECDISで計測することが必要です。皆さんはレーダーやECDISで船首から岸壁までの距離や船尾からブイまでの距離を素早く測ることに日頃から慣れておいてください。

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