日本のおいしい『野菜・果物』の話です。
以前、お米がなくなる話をしましたが、今度はある船で醤油が足らなくなるとChief Stewardが報告してきました。そのときは、ぎりぎり何とか足りましたが、Chief Stewardに対しては、「日本人は米、味噌、醤油が命だから、絶対に切らすな。」と厳しく指導しました。醤油と言えば、日本人が原因で醤油が足らなくなるケースもあります。それは魚の煮付けです。
沖待ち中にアジやタイが大量に釣れると毎晩のように酒の肴として魚の煮付けを作ります。当然、煮付けには大量の醤油が必要で、毎晩大量に醤油を消費しているとあっという間に業務用18リッター缶入りの醤油が無くなってしまいます。若い頃、日本人コックが乗船している船で、毎晩ギャレーで甲板部が魚の煮付けを作っていたため、醤油の使い過ぎを賄いに注意されたこともありました。本来は個人が自分で購入した醤油を使用しなければいけません。
外国人Cateringの問題は米・味噌・醤油の在庫管理だけではありません。食料を注文するときも多くの外国人Chief Stewardは応用が利きません。前航海とほとんど同じ種類・同じ量を注文するのです。在庫が余っているので、今航海は注文するのを控えようとか、いつも消費が多いため在庫が少なくなっているので、今航海は多めに注文しようというような調整能力に乏しいのです。理由の一つは、多くの外国人Chief Stewardがパソコンを所持しており、自分のパソコンで食料注文書を作成しているからです。
Excelで作成した過去の注文リストの数量を少し手直して予算額になるよう調整して、それで出来上がりとしているのでしょう。細かな数量の増減や取り消し・追加をしないまま注文書を提出する傾向があるのだと思います。その証拠にある船ではDry Provision Storeにチューブ入りワサビが10本以上もあったり、ポン酢やドレッシングが20本以上も並んでいました。そんなに在庫であふれていても、まだ、毎航海、チューブ入りワサビやポン酢を同じ量だけ注文しようとするのです。
また、日本の果物に旬の時期があることを外国人にはなかなか理解できないようです。フィリピンやインドネシアには四季がないので当然かも知れません。南国ではあってもせいぜい雨季と乾季だけです。ですから、イチゴは春の果物、スイカは夏の果物、梨や柿は秋の果物、みかん(温州みかん)は冬の果物であるという旬の時期を知らずに平気で真夏に温州みかんを注文したり、真冬にスイカを注文したりします。米国や豪州のネーブルオレンジは年中入手できるのかも知れませんが、日本の果物は季節限定です。
もっとも最近は日本の果物も温室栽培や冷蔵保存技術が発達してどんな果物も年中スーパーに並んでいることが多いようです。ちなみに温州みかん、「おんしゅう」と書いて「うんしゅう」と呼びます。温州とは中国浙江省の地名ですが、温州みかんの原産地は鹿児島県の長島とされています。
日本食で使用する「キャベツ」と「白菜」の使い分けができない外国人Cateringも多くいます。焼肉の食材をテーブルに用意すると、野菜の中に白菜が混ざっていたり、鍋の食材にキャベツが混ざっていたりします。彼らは野菜の種類にあまりこだわった料理を食べないのでしょうか、それとも日本食が繊細過ぎるのでしょうか。殆どの外国人Cateringはキャベツと白菜の使い分けができません。
同じように一味唐辛子と七味唐辛子も日本語の読めない外国人Cateringには区別がつきません。もちろん一味は唐辛子ですが、七味の七つとは唐辛子と他6種類、けしの実、胡麻、山椒、麻の実、菜種、陳皮などです。ちなみに、獅子唐辛子は普通はそれほど辛くありませんが、10個に1個ぐらいの割合で激辛のものが入っています。どれが辛い獅子唐辛子かを見分ける方法は、種の数です。中の種が少ないのが猛烈に辛い獅子唐辛子です。