鍵がかかっていても脱出できる手品仕掛けの南京錠

船で使われている『特殊な鍵』の話です。

多くの船では「Restricted Area(制限区域)」を南京錠や六角ナットで外側から鍵をかけているはずです。では、火災発生時に乗組員が外へ逃げ出すために設けられている脱出経路の「Escape Door」にも外側から南京錠をかけて良いでしょうか? 外から南京錠をかけると内側からドアが開かないので脱出できないと思いませんか?

しかし、正解は「Escape Doorにも外側から南京錠を取り付けて良い」です。その理由は下の写真のように外から南京錠がかけられていても、内側から簡単に鍵を外すことができる仕掛けになっているからです。そのからくりは、内側についている蝶ナットを外せば、鍵がぬけてドアを開けることができる仕掛けになっています。

南京錠はデッキ上のストアーの施錠に使用しているため、潮風・雨露にさらされて、どうしてもすぐに錆びて、動きが硬くなります。そんなとき、気の利いた甲板部員がいれば、指示しなくても定期的に甲板上の南京錠を集めてきてLOに漬けて、滑らかにしてくれます。こんなちょっとした気配り・小技を発揮するか否かで甲板部員の技量がわかります。

南京錠の鍵は「Common Key」になっているでしょうか?船によっては、古い南京錠と新しく取り替えた南京錠の鍵が異なっており、合う鍵をさがすのに時間がかかるということがあります。船用品で南京錠を注文するときはCommon Keyで申請してください。特別なストアー以外の南京錠は全てCommon Keyにすべきです。

盗難防止対策と言えば、東南アジア等の治安の悪い港に錨泊する場合、泥棒による盗難に十分な警戒が必要です。泥棒は海賊とは違います。海賊は人に危害を加えたり、船を乗っ取ったり、身代金目当てに人質として拘束したりして凶暴ですが、泥棒はそこまで凶暴ではありません。しかし、泥棒も必死なので、盗めるものは何でも盗んで行きます。

泥棒は本船の誰も気づかない間に本船に乗り込み、機関室に忍び込んで予備品を持ち去ったり、甲板上の係留索やLife Raftを盗んだりして逃げて行きます。泥棒が本船へ忍び込む方法は敵ながらあっぱれです。泥棒はまるで猿(モンキー)のように錨鎖をつたって錨泊している船に上ってきます。そのため、舷梯を海面まで降ろしたままにしないことはもちろん、ホーズパイプにも下写真のような蓋(Chain Cover)を設置します。泥棒にとって錨鎖が絶好の梯子代わりです。盗難防止策の基本は泥棒を船上に上がらせないことです。

近年は船のSecurity体制が非常に厳しくなり、「Restricted Area(制限区域)」と称して甲板まわりの入口やストアーのいたるところを関係者以外立入り禁止区域に設定して「Restricted Area」と現場に表示してロックアップしています。しかも、ある船では「Restricted Area」を3段階のレベルに分類して運用しています。

3段階のレベルとは、レベル1が「家族や代理店が立ち入ることができる制限区域」、レベル2が「業者が立ち入ることができる制限区域」、レベル3が「監督が立ち入ることができる制限区域」です。レベル1の家族は居住区や公室だけを使用することを許され、レベル3の監督は船のどこへでもアクセス可能です。「ここまで細分化しても実際には、専属の保安要員がいない船では厳格に運用できない」という意見もありますが、最大限のSecurity対策を講じる姿勢は評価に値します。

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