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バラバラに分解する前のマーキングは常識です

『解放整備作業』、英語で言うとオーバーホール(Overhaul)の話です。

皆さんは整備のために機器の分解をするとき、その前にマーキングしていますか?例えば、下の写真のようにカバーを外す前にカバーと本体に直線でマーキングします。そうすれば、組み立てるときには簡単に元の位置にカバーを取り付けることができます。もし、マーキングしていないと、オリジナルの位置から90度、180度ずれた位置で取り付けることもあり、微妙にボルト穴がずれたり、当たり面が合わなくて元通りにならないこともあり得ます。

機器を分解するときのマーキングは、機関部なら当たり前のように習慣付いていますが、甲板部がこの種の作業をするときは意外とマーキングする人が少ないようです。フランジやカバーのボルトを外し、再び取り付けるときに、はめ込む位置が元と違った場合、微妙にボルト穴が合わなくて取り付けるのに苦労することが結構あります。そのため、外す前のマーキングは常識です。

垂直方向を向いているフランジにボルト・ナットを取り付けるとき、皆さんはボルトを下から差し込みますか?それとも下から差し込みますか?通常は「ボルトを下側から差し込む」が正解です。ボルトを下から入れて上からナットをするのが正解です。万が一振動等でボルト・ナットが緩んだ場合を想像して下さい。もし下側にナットがあると、緩んでナットだけ脱落してボルトはそのまま残ります。これではナットが床に落ちるだけで、発見されにくいのです。逆にナットが上側に取り付けてあれば、ボルトもナットも落ちる可能性大です。そしてボルト・ナットの脱落が発見されやすいのです。

実際に私が経験した分解する前にマーキングしなかったことによる失敗を一つ紹介します。ある船でレーダーマストの4本のワイヤーステーを整備のために取り外し、グリースを塗布して取り付け直すという作業を行いました。通常ならば半日もあれば余裕で終わる作業です。全部のワイヤーを取り外してグリース塗布まで終わりました。そして、ステーワイヤーを1本ずつ取り付け始めると長さが微妙に合いません。ある場所のワイヤーは長すぎるし、他方のワイヤーは短すぎるといった調子です。

結局、試行錯誤してやっと取り付けたときには日が暮れていました。4本のワイヤーにはどの位置のワイヤーであるか印を付けていませんでした。マーキングしていれば、半日で終わる仕事がマーキングしなかったために丸1日かかりました。マーキングしておけば良かったと後悔しながらの作業はいつも以上に疲労感でいっぱいです。機関士だけではありません。航海士の皆さんも分解作業時にはマーキングすることを習慣付けて下さい。

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