命の源である『飲料水』の話です。
昔から常識のように言われてきましたが、船の造水器で作った蒸留水ばかり毎日飲んでいると、歯がぼろぼろになり、体を悪くするそうです。しかし、ある本で医学者が論じていましたが、「蒸留水で体が悪くなるという話には根拠がない。」と主張しています。蒸留水は無害であると言うのです。どちらが真実なのでしょうか?
旧海上労働科学研究所の研究結果では、「蒸留水を飲用していると保健上の害があり、蒸留水の有害条件を除くためには添加ミネラルが必要である。」という結論を出しています。蒸留水は人体に有害であるという主張です。蒸留水はミネラル(カリウムK、ナトリウムNa、カルシウムCa、マグネシウムMg)を含んでおらず、蒸留水を飲用すると人間の体内からミネラル分が溶出されるそうです。そのため、造水にはミネラル剤を添加してから飲用すべきであるとしています。しかし、ある学者によると、溶け出るミネラルは人間の細胞からではなく、細胞が不要としたミネラルなので、無害であると論じています。
蒸留水は有害か?無害か?正解はどちらなのでしょうか?はっきりした答えは不明です。いずれにせよ蒸留水自体には毒性がないので、適切なミネラル剤を添加して飲用すればOKということでしょうか。あるいは、蒸留水の飲用をほどほどにして可能な限りミネラルウォーターを飲用すれば良いのでしょうか。何事もほどほどが一番だと思います。蒸留水を1年間飲み続けることは百害あって一利なしという気もしますが・・・
蒸留水の話以外にも、昔から常識と言われていたことが意外と今ではまったく逆の話が定説になっていることが結構あります。例えば、昔は運動しているときや運動直後はバテるので、水を飲むなと言われていましたが、今ではそんなことを言う人はいないはずです。マラソンでもサッカーでも平気で競技途中に補水しています。また、昔はスポーツ選手にとって、うさぎ跳びが筋力トレーニングには欠かせませんでしたが、今では敬遠されています。詳しくは知りませんが、うさぎ跳びをするとどこかの筋肉でも傷めるのかもしれません。また、昔は野球選手は体を冷やすといけないので絶対に水泳禁止と言われてきましたが、今では野球選手も平気で水泳を楽しんでいるようです。
知っている人が多いかも知れませんが、外国人が乗り組む船では飲料水タンクを装備していない船もあります。その船では港で飲料水を補給することはなく、蒸留水にミネラル分を入れて飲むか、または、港で多量のミネラルウォーターを購入しています。私達日本人船員が乗船する船では、出来る限り造水(蒸留水)を飲用せず、港で飲料水を補給して飲用しています。そしてドック入渠等で補水ができない場合には、臨時措置としてミネラル剤を投入した造水(蒸留水)を飲用することとなっています。
海外旅行へ行くときの注意事項として、「飲料水はミネラルウォーターを飲むこと、決して水道水を飲んではいけない。」と言われます。レストランにおいて、ときにはジュースよりも高額な飲料水を飲むこともあります。外国人には、水道の蛇口から出る水は決して飲めない、買ってきたボトルのミネラルウォーターが飲料水であるという習慣が日頃から身に付いています。日本人は水と安全はタダだと思っていますが、世界的には水はタダではありません。
水道の蛇口から出る水を飲むことができる国は日本を含めて世界で9カ国しかないのです。ですから世界的には飲料水と言えばミネラルウォーターのことで、お店で買う水が飲める水なのです。ちなみに「ミネラルウォーター(Mineral Water)」と「ナチュラルウォーター(Natural Water)」は同じと思いがちですが、厳密には異なります。日本で「ナチュラルウォーター」と言えば文字通り自然の水で、例えば山からの湧き水です。一方「ミネラルウォーター」と言えばナチュラルウォーターにミネラル調整等を行った加工水のことです。