傭船契約にも関わる重要な荷役書類である『Notice of Readiness』の話です。
通常「Notice of Readiness」のことをその頭文字を取って「N/R(エヌアール)」と読んでいます。日本語でいうところの「荷役準備完了通知」です。この書類の持つ意味は、「さあ、本船は荷役準備ができています。何時でも積荷役、揚荷役を開始できますよ!」です。
本船が作成し、荷役準備完了という重要なタイミングで関係先に提出する通知書類が「Notice of Readiness」です。N/Rは取り決めにもよりますが、通常は口頭だけでなく、書面でターミナル側へ通知します。法律上は口頭による通知だけでも有効で問題はないようですが、書面による通知が一般的です。
C/Oや船長が「N/R Tender(提出)の時間を何時にしようか?」とか「ターミナル側がN/R Accept(受理)した時間は何時かな?」と話しているのを聞いたことがあるでしょう。昔よく船長さんから「C/Oは自分自身で責任持って荷物を積んだり卸したりしているという自覚があれば、おのずとN/Rの時間が気になり、いつN/Rをターミナルへ提出し、それがいつ受け入れられるかをチェックするはずだ。」と言われました。その通りで、N/Rは荷役最高責任者にとっては重要な通知です。もし3/OがN/R書類作成を任された場合、N/Rの持つ意味を十分に理解して、間違いないよう正確な時間や場所を記入して完成させなければいけません。
タンカーやLNG船ではあまりN/Rの重要性を意識することはありませんが、バルカーでは嫌でもその重要性が理解できます。バラ積船で穀物や特殊な貨物を積むときは、準備作業として沖待ち中や航海中に甲板部全員で一生懸命、ホールド掃除、水洗い、塗装作業を行います。そして積地に到着し、Surveyorが乗船して実施する「Hold Inspection」に合格して初めてN/R Acceptとなります。
汚れたCargo Holdでは積荷が認められません。そして「Voyage Charter」の場合にはN/R Acceptの時間、つまり積荷準備完了時間をもって傭船契約の開始となるのです。従ってC/OもおのずとN/Rのタイミングを意識するようになります。契約の期限に遅れずにHold Inspectionに合格し、N/RがAcceptされると船長やC/Oの肩の荷が一つ下ります。
その他に傭船契約の話の中で出てくる言葉に「Demurrage(滞船料)」や「Dispatch Money(早出料)」があります。「時は金なり(Time is money !)」ということわざがあるぐらい、時間は貴重です。傭船されている船が契約(予定)より荷役を早く終わらせた場合は早出料が発生し、契約より遅れた場合に滞船料が発生し、それぞれChartererとOwner間で精算することとなります。
ところで、「Lay/Can」や「Window Delivery」という言葉を聞いたことがありますか?定期傭船されている船ではあまり意識していないかもしれませんが、「Voyage Charter」の船やSublet(又貸し)される場合には非常に重要な言葉です。「Lay/Canが16日‐17日です。」とか「Window Deliveryが16日の00:01から24:00です。」という言い方をします。要はその指定された期日までに指定された港へ到着しなければ、その契約が無効となってしまう可能性があるのです。私達船の運航者にとっては、機関故障や荒天等予期せぬ出来事を含めて、指定された到着期日に遅れることがないように最善の努力を尽くさなければいけません。