あなたは、どちらを向いて仕事をしていますか?

『LNGの売買契約』の話です。

まず、契約の分かりやすい例として、2通りの「テレビの買い方」を比較してみましょう。街の電気屋でテレビを買うときに、「店頭で好きな商品を選んで自分の車に乗せて持って帰る買い方」と「指定した商品を指定した期日に家まで電気屋の車で運んでもらう買い方」の2種類があります。自分で買って帰る方法と託送してもらう方法の2種類です。

どちらの方法でも同じテレビを買うことができますが、電気屋から自宅までテレビを運んでいるときの責任がまだ電気屋にあるのか、自分の責任で運んでいるのかという違いがあります。買う商品をテレビから船の貨物に置き換えて、運ぶ手段を車から船に置き換えれば、船の世界でも同じように2種類の売買契約に分かれるのです。「自分の船で相手の港まで行って貨物を積む」のか、「相手の船で自分の港まで貨物を運んでもらうか」の違いです。

貨物(Cargo)を海外から購入する場合、売主(Buyer)と買主(Seller)がCargoの売買にかかわります。両者でCargoを引き渡す方法について取り決めたのが売買契約(Sale and Purchase Agreement)です。

皆さんは「FOB」という言葉を聞いたことがありますか? 「FOB」は「Free on Board」又は「Free of All Charges On Board the Vessel」の略で、日本語で言うところの「本船甲板渡し」です。売主側は船に積込んだ時点で買主にCargoを引渡したことになります。従って買主が船の手配や保険料の負担をしなければいけません。当然、買主が船を用意し、売買数量の確定は積地で行います。そして確定された積量に対して買主が代金を支払います。

LNG船ではこの「FOB」という取引条件の他に「Delivered Ex-Ship(DES)」(一般的にEx-Ship契約と呼ぶ)という取引条件があります。Ex-Ship契約の場合、売主が船を手当してLNGを積んで揚地までもって行き、揚地で船のフランジをLNGが通過して買主へ引渡し完了となります。従って売主が船の手配や保険料を負担し、買主が関税を支払うこととなります。売主にとってEx-Ship契約にすることによって、海上輸送コストを把握し、生産調整がし易いというメリットがあります。この場合の数量決定は揚地ということになります。

DES(Ex-Ship)は別名CIF(Cost Insurance and Freight: 保険料運賃込み)とも言います。勘違いしやすい、混乱しがちな立場となります。LNG船によってはDES航海とFOB航海が毎航にようにころころ変わる船があり、先航海はDESでSeller側の船としてLNGカーゴを運んでいたのが、今航海はFOBでBuyer側の船としてLNGカーゴを運ぶことがあります。私達の職務である「安全にLNGカーゴを運ぶ」という仕事自体は基本的に同じですが、船の置かれた立場が全く逆となるのです。船としては売主側に雇われているのか、買主側に雇われているのかで積地、揚地におけるターミナル関係者との対応が全く異なってきます。

 

「日本の製鉄会社と〇〇万トンのCOA契約を結んだ。」といった話をよく聞きます。この「COA契約」とはContract of affreightmentの略で、数量運送契約です。一定期間に取り決めた数量の貨物を特定の積地から特定の揚地へ運送する契約です。この契約では船は特定されず、船主は使用する船を選択して効率良い配船ができます。安い船を手当して商売ができるというメリットがあるのです。一方、定期用船契約(Time Charter)や連続航海用船契約(Voyage Charter)では船主は特定の船を用船者に提供する義務があります。

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