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あなたの船は、水難の相がでていませんか?

船内の水にまつわるトラブルは数々ありますが、ここでは『補水作業に関するトラブル』をいくつか紹介します。

ある港で飲料水の補水作業が始まったのに飲料水タンクのレベルが一向に増えてきません。なぜでしょうか?原因はバルブの切り替え忘れでした。使用頻度の少ない飲料水補給ラインのパイプ内はゴミや錆びで汚れている可能性があります。そこで補水開始時にパイプ内を綺麗にするために補水開始の最初の段階ではDrink Water Tankへ飲料水を入れずに、Fresh Water Tank側へ飲料水を流してライン内のゴミや錆びを洗い流す、いわゆるFlushing(洗浄)を行います。

通常、数分後には、Flushingを終えてバルブをFW TankからDW Tankへ切り替えなければならないのですが、甲板部担当者が切り替えるのを忘れていました。そのため多量の補水がFW Tankへ入り続けていたのです。これでは肝心のDW Tankのレベルは増えません。バルブの切り替えを忘れた理由は、補水作業中にCarpenter役の前任ABから後任ABへ交代となったのですが、FWラインからDWラインへの切り替え手順の引継が確実になされていなかったのです。前任者は交代後上陸することに気もそぞろとなり、後任者への引継が疎かになったのかも知れません。

補水作業に関するトラブルをもう一つ。ある港で補水したときのことです。補水作業が予想以上に多大な時間を要しました。なぜでしょうか・・・時間がかかった理由は陸側作業者が元バルブを絞り過ぎており、流量が少な過ぎたためです。直接の原因は元バルブの絞り過ぎです。しかし、本船側が定期的に飲料水タンクのレベルをチェックし、流量を確認していれば起こらなかったトラブルとも言えます。

まず、補水時のホースの状態をみれば、圧力が弱いためにホースがたるんだ状態となり、流量が少ないことはある程度わかったはずです。それを確認していませんでした。また、補水を開始したあと1時間以上飲料水タンクのレベルチェックをしていませんでした。補水作業時の飲料水タンクのレベル変化のチェックは常識です。最低でも30分毎の監視は必要です。何百トンもの水を何十時間もかけて補水するならいざしらず50トンの水を数時間で補水するのですから、適当なインターバルでチェックすべきです。

もう一つ補水作業のトラブルです。LNGターミナルでの補水作業で予定補水量となったため、陸上の元バルブを本船乗組員が陸上の許可なく勝手に閉としました。これが大問題なのです。LNGターミナルならではのトラブルです。ご存知の通りLNGターミナルでは陸上施設を乗組員が勝手に触ることはタブー、厳禁です。LNG業界の常識として広く知れ渡っていることです。他人の家の蛇口を勝手にひねってはいけません。公共埠頭で作業をしているという意識・感覚ではLNG業界を渡り歩いていけません。そこまで神経を使う必要があるのかと思ってはいけません。「郷に入っては郷に従え!」です。

さらにトラブル話をもう一つ。ある船で補水作業を終了したときのことです。陸上側の送水した量と船側が受け取った量が大きく異なりました。陸上側のカウンターから計算する補水量と本船DWタンクのレベル変化から計算する補水量に大きな差があり、本船側が計算した補水量が圧倒的に少ないのです。詳しく調べてみると本船のFWタンクとDWタンクを接続する共通ラインがあり、そのラインのバルブが開いていたのです。そのためDWタンクとFWタンクが共通となって、レベルの高いDWがレベルの低いFWタンクへ流れ込んで、DWが増えずFWのレベルが上がっていました。

以上お話したように補水作業は簡単なようですが、細かなトラブルはたくさん発生しています。


参考
給水作業の写真あり:港での生活に欠かせない給水 第1回独立行政法人水資源機構 – 広報誌『水とともに』2015年08号


参考
給水作業の写真あり:港での生活に欠かせない給水 第2回独立行政法人水資源機構 – 広報誌『水とともに』2015年09号

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