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手に優しい中性洗剤はバクテリアにも優しい

ある社船実習生から「セワゲって何ですか?」と質問されました。尋ねられたこちらも「???」です。良く聞いてみると「SEWAGE」のことをローマ字読みで「セワゲ」と読んだのです。何かの商品名と思ったそうです。そんな「SEWAGE」の話です。

Sewageでよく問題になるのが、便所掃除に使用する洗剤の種類です。便器を塩素系洗剤で掃除すると、それがSewage Treatment Systemに流れ込み、バクテリアが死滅し、汚水処理が機能しなくなってしまいます。ですから、便所掃除にはバクテリアにやさしい中性洗剤を使用する必要があります。

このことを知らない乗組員が意外に多いので、まめに船内周知して下さい。便所からの汚水・汚物もバクテリアが正常に浄化した後は殆ど汚水・汚物の匂いがしません。もし、匂いがきついようなら、それはバクテリアが死滅しているのかも知れません。Sewageは三等航海士の担当機器ですから、若いときにSewage Treatment Systemの原理や構造を十分に理解し、3方弁の位置、Sewage Tankの掃除方法等の運用・保守整備方法を知っておきましょう。

手洗い用の汚水ラインを「Soil Line」、便所の汚水ラインを「Sanitary Line」と区別して呼ぶことがありますが、どちらも広義の意味では「Soil Line」です。では、皆さんは「トイレのそばのスカッパー」と「シャワールームのスカッパー」の違いを理解していますか?

トイレ横のスカッパーはSanitary Pipeを経由してSewage Lineにつながっているため、Sewage Systemを使用しているときはトイレ掃除に中性洗剤以外を使用できないのと同じように、トイレ床の掃除も中性洗剤以外を使用してはいけません。バクテリアが死んではSewage Systemの意味がありません。一方、シャワールームのスカッパーは手洗い(ベーシン)と同じ排水ラインで機関室のStorm Valve経由でOverboardに直接排出します。だからこそ、シャワーで石鹸やシャンプーを気兼ねなしに使用できるのです。

皆さんの家庭の風呂場や流し台の排水管にもS字トラップが付いています。常に排水管の中に水が入った状態で排水管内のいやな匂いが逆流してきません。もし、排水管にS字トラップがなくて直管しかなければ、パイプ内部から汚水の匂いが漂ってくるはずです。

タンカーのSlop Tankに装備されているSurface ValveもS字トラップの原理を利用しています。もしSurface Valveがタンクに直接接続されていれば、バルブを開けたときにSlop Tankの内圧により油分が噴出してしまい、デッキ上は油だらけになります。それを防ぐためにS字状のパイプが付いており、内部に水を満たしておくことにより、バルブを開けてもSlop Tankの内部から油水が噴出すことがありません。

余談ですが、温水の話も。家庭でも船でも温水の蛇口を開ければ好きなときに好きなだけ熱いお湯が出てきます。よくよく考えてみたら、船で24時間いつでも温水の蛇口をひねれば熱いお湯が出るのはなぜでしょう。以前に温水用ヒーターの話をしましたので、お湯が機関室で作られていることは皆さんも理解できると思います。しかし、夜間に誰もお湯を使用していなかったら、温水パイプ内のお湯が冷めてしまいパイプ内の水がお湯に入れ替わるまで、当分の間お湯がでないのではないかと思いませんか?しかし、朝一にお湯の蛇口をひねっても熱いお湯が出てきます。どんな「からくり」があるのでしょうか?その「からくり」は循環ラインです。冷水ラインは機関室から一方通行で清水ポンプによって加圧されていますが、お湯の通っている温水ラインはぐるぐる機関室と居住区内を循環しているのです。循環することによりお湯ライン全体が常に熱いお湯で満たされています。何気なく使っている冷水と温水、一方通行と循環の違いがあるのです。

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