係船索とテールロープを連結する『シャックル』の話です。
そもそも、なぜテールロープを使用するかというと船体動揺の大きな力を吸収するにはワイヤーでは伸縮率が小さ過ぎます。そこで、その欠点を補うために合成繊維索のテールロープを使用するのです。ワイヤーの先端にTail Ropeを取り付けますが、その連結にシャックルが必要となります。
このシャックルに3種類のタイプがあるのを皆さんは知っているでしょうか。いや正確に言うと「Socket Type」(下写真)を入れると4種類ということになります。
「Socket Type」はシャックルではないので、ここでは説明を省略します。これら3種類のシャックルの違いは何でしょうか?それはメーカーが異なることです。
3種類ともヨーロッパのメーカーだったと思います。マンダル・シャックル (Mandal Shackle)、トンズバーグ (Tonsberg)、ボスリンク (Boss Link)の3種類で最も知名度の高いのがマンダルシャックルです。ですから、トンズバーグ・シャックルやボスリンク・シャックルのこともマンダル・シャックルと呼んでいる人が多いかも知れません。
参考
Tonsberg Mooring links & Mandal Fairlead shacklesMOORING SHACKLES : KD. Koronakis S.A
参考
TIMM BOSS LINKWilhelmsen Ships Service AS
シャックルの呼び方が不正確でも別に構いません。重要なことは「シャックルの向き」です。シャックルのどちら側にワイヤーを結ぶか、どちら側にTail Ropeを結ぶかが重要です。甲板上で一般に使用する普通のShackleと同様にマンダル・シャックルにもローラー側とU字側があります。ここで注意しなければいけないことは、ローラー側とU字側のどちらにTail Ropeを結ぶかが決まっていることです。そして、よく勘違いするのが、メーカーによってローラー側にTail Ropeを結ぶタイプとU字側にTail Ropeを結ぶタイプがあります。マンダルではU字側にTail Ropeを結び、トンズバーグ、ボスリンクではローラー側にTail Ropeを結びます。そして当然ワイヤーはその逆側に結ぶことになります。
なぜ逆に取り付けてはいけないのかというと、逆に取り付けると強度が低下するからです。最近はほとんどありませんが、昔は取り付ける向きが決まっていることを知らない人が多く、逆に取り付けていることが結構ありました。最近でも整備作業で取り外して、復旧するときに何気なしに逆に付けてしまうことがありますので、担当航海士は入港前にシャックルの向きや状態を点検する必要があります。適切なシャックルの向きについては上の参考リンクやIMPAカタログPage21-6を参照して下さい。
ところで、船用品を注文するときに参考にするこのIMPAカタログ。カタログに記載の番号を書いて注文すれば、世界中どこでも間違いなく希望する船用品が手に入ります。ではIMPAとは何の略でしょうか? IMPAはInternational Marine Purchasing Associationの略です。この協会は船用品を購入する側、供給する側の両者が国際的な基準を策定し、効率化を促進するために設立された組織です。このIMPAという協会が3万点以上にのぼる船用品の便覧(IMPAカタログ)を発行しているのです。