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アンカーチェーンが90度コロンとひっくり返ってもあわてない

甲板機器の中でもひとたび発生すると大事故になることが多い『Windlass』の話です。錨鎖のトラブルの代表選手がアンカーチェーンのねじれです。さあ、揚錨して出港というとき、錨鎖を巻き揚げ中によく90度チェーンがひっくり返ってジプシーホイールとコントローラー間で錨鎖が捩れてしまいます。多くの人がこのチェーンのねじれを経験しているのではないでしょうか?

チェーンのねじれ

チェーンのねじれは錨鎖巻き揚げ作業中の他にもレッコーアンカーするときに錨鎖がジブシーホイール上で上下に激しく踊って、90度ひっくり返ることもあります。経験のない人は非常に強運なのか、錨に携わった経験が少ないかのどちらかでしょう。ひっくり返るときはいとも簡単にコロンとひっくり返ります。

しかし、ひっくり返ってもあわてる必要は一切ありません。大型船の鎖は1個数百kgあり、手で動かせるようなものではありませんが、数本のワイヤーと数個のチェーンブロックがあれば大丈夫・・・・・要領よくやれば、1時間程度でチェーンのねじれをもとに戻すことができます。

揚錨中にチェーンが捩れる原因の多くは、アンカー・スイベルの固着です。錨鎖が磨耗で痩せてコントローラーの溝を通過するときに遊びが大きく、かつスイベル(Swivel)が固着しているため、錨鎖を引っ張る方向が船尾(6時)方向となったときにHawse Pipe内で錨鎖が捩れるのです。

Windlass事故の話を一つ。通常の投錨手順は、船首油圧ポンプを始動し、クラッチを嵌合し、アンカーラッシングを外し、コントローラーストッパーをオープンするという順序です。もし、作業手順を間違えて、アンカーラッシングを外し、コントローラーストッパーもオープンした後、油圧ポンプをかけずにWindlassのクラッチを嵌合させて、ブレーキを緩めたらどうなるでしょう。錨は自重により海中に落ちて行き、確実にWindlassは壊れます。

油圧ポンプは逆転方向に非常に弱く、油圧が掛かっていない状態では錨や錨鎖の重量を保持する力はなく、油圧ポンプ内部がバラバラに壊れて、下手すればケーシングごと吹っ飛びます。実際、日本人船員が乗船していた社船でこの事故が起こっています。作業者は何を勘違いしたか、油圧ポンプを始動させずに、揚錨の準備を始め、クラッチを嵌合し、ブレーキを緩めたのです。その結果ポンプケーシングが割れて吹っ飛びWindlassが使用出来なくなるという大事故になりました。

そう言えば、Windlassについている「チェーンさばき」というものを知っているでしょうか?結構、この呼び方を知らない人が多いはずです。いや、ひょっとしてその存在自体を知らない人もいるのではないでしょうか?英語では「Anchor Chain Guide」または「Stripper Bar」と言いますが、日本語では「チェーンさばき」と呼びます。その役割は錨鎖が団子状態になっている場合に解いてチェーンロッカーに入るよう、文字通り錨鎖をさばくための鉄製のバーです。

チェーンさばき

また、私が経験した錨鎖のトラブルは、下写真のように錨鎖をウォークバックで繰り出すときにチェーンロッカーからクリアーに上がって来ずに、団子状態で出てきました。

チェーンの団子状態

このまま繰り出すとジプシーホイール上で錨鎖が90度コロンとひっくり返る可能性があります。先ほど話したチェーンさばきで錨鎖がきれいにさばかれれば問題ないのでしょうが、要注意です。錨鎖がかたまって出てくる原因はウォークバックの速度が遅過ぎるためです。錨鎖に適度なテンションがかからないために錨鎖が団子になるのです。錨鎖を早い速度で降ろすと自然と直りました。

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