スカッパープラグは油を船外へ流さないための最後の砦

昔に比べて非常に厳しくなった『海洋環境保護』の話です。

環境破壊や地球温暖化は世界共通の問題であり、地球規模で真剣に取り組まなければならない課題です。その中で海洋環境保護は世間でも注目されており、船会社は果たすべき重要な役割を担っています。多くの船会社の方針(Company Policy)として「ゼロ海洋汚染発生(Zero Spill to the Sea)」と謳われており、私達船員も海洋汚染防止に全力を注がなければいけません。

過去に一度、船外へ油を流してドキッとしたことがあります。ある船で積地出港の数時間前に強いスコール性の雨が降り、あっというまにUpper Deckに水が溜まってしまいました。すると、まだ港内停泊中であるにもかかわらず、船首スタンバイの甲板部クルーがデッキ上の雨水を排出するために何気なくScupper Plugを抜いたのです。

当時C/Oであった私がデッキ上を歩いていると、デッキ上に溜まった雨水の水面が油膜でギラギラしているではないですか。バルブから漏れた作動油が雨で流されて、その油膜がScupperから流れ出て海面へ広がりつつあります。夜間であったので、さほど目立ちませんでしたが海面がギラギラしていました。幸いどこからもクレームが出ず、表立ったトラブルにはなりませんでしたが、一歩間違えれば油流出による海洋汚染の大問題です。

Scupperは甲板上の漏洩油の船外流出を食い止める最後の砦です。デッキ上にScupper Plugをしていたことで間一髪、油が船外へ流出しなかったという事例が過去にもたくさんあります。甲板上の油圧ラインから突然、作動油が漏洩するかもわかりません。スカッパーが開いているとあっと言う間に大量の漏洩油が船外へ流れ出てしまいます。ですから港内では必ずスカッパープラグをしてください。

他にもドキリとした事例がありました。出港時に海面に少し油膜のようなものが見られました。船橋ウィングからよく見ると、ハウス前のスカッパーが少し開いてデッキ上の雨水が船外に出ているではありませんか。甲板部に事情を聞くと、昨夜雨が降ったのでターミナルの了解のもとにスカッパープラグを外して甲板上の雨水を船外へ排出し、そのままにしていたそうです。そしてたまたまバルブ用作動油の油分が雨水と一緒に船外へ流れていたのです。今回も少量の排出だったので問題にはなりませんでしたが、油分の船外流出は厳しく禁止されていることは言わずもがなです。港内での雨水の船外排出は必ずUnder Control、つまり乗組員は油分がないことを確認しながら排出しなければいけません。このことは皆さんも肝に銘じて下さい。

また、こんなこともありました。LNG船の新人3/Oがターミナル関係者と一緒に荷役前の安全チェック(Safety Check)をしているときです。居住区のドアが確実に閉鎖されているか等々チェックリストに従って荷役前に実施するのが安全チェックです。チェック中にUpper Deckのスカッパープラグが外れてデッキ上に転がっているのを見て、3/Oは指を差して「ヨシ!」と言いました。周りの人は唖然とします。Scupper Plugがされていない状態を「ヨシ!」としたということは、彼がスカッパープラグをなぜ取り付ける必要があるのか、いつ取り付けるべきかが理解できていなかったということです。これでは指差し呼称(Finger Pointing)は何の役にも立ちません。

Scupperに関して、特に注意しなければいけないのが、港内着桟中に雨水が溜まってDeckからOver Flowしそうになったときです。Scupperを外して船外へ排出せざるを得ませんが、船外へ排出する場合は必ずTerminal関係者へ連絡し、雨水に油気が無いことを確認しなければいけません。そしてオイルキャッチャー等の油処理剤を使用しながら船外排出すれば安心です。Over Flowさせてしまい、知らない間に把握していない場所から船外へ排出するのと自らがコントロールしてPlugを抜いてScupperから船外へ排出するのでは大違いであることを理解して下さい。

1 COMMENT

アバター S.I. KUROSAWA

スカッパー・プラグの取っ手が固着しており回せない。
側面のラバー部が傷んでおり密封できていないetc.
訪船時、様々な不具合に遭遇したことがあります。
“備えあれば憂いなし”
新品の予備品を常にストックしておくことを心がけたいですね。

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