パイプに穴が開くトラブルは船では珍しくありません。そこで『パイプ修理』の話です。
バラストラインの海水パイプや雑用水用の清水パイプが錆びにより破口して漏洩するというトラブルがしばしば発生します。こんなとき、定番とも言える応急修理方法がありますが、皆さんはもう経験しましたか? 小径で噴き出す圧力が弱い場合は、タイヤチューブを巻きつけて漏れを止めることができます。
しかし、圧力が強い場合や大口径のパイプの場合や湾曲部分からの漏洩の場合はタイヤチューブが使用できません。そんなときは、管径、破口の場所、大きさ等そのときの状況にもよりますが、下記の手順で仮修理を行います。これにより大部分の海水パイプの漏洩を止めることができます。修理後は上の写真の様な格好になります。その手順を以下に示します。
- パイプ内の残水を排出する。
- 表面のペイントやサビを取り除き破口周辺をきれいにする。
- 破口にビスもしくは木栓を差し込む。(ビス・木栓のでっぱりは切り取る)
- グラスウールテープにデブコンを塗り、これを損傷部分に当てる。(2、3枚重ねる)
- デブコンが固まれば、上にラバーシートを当てる。
- パイプ全体をロープまたはホースバンドで締め付ける。
船齢の古い船では海水パイプの漏洩は珍しくありません。いざと言うときに慌てないよう本船の応急資材の保管場所とその数量を確認しておきましょう。エミリクロス(サンドペーパー)、ビス(又は木栓)、グラスウールテープ、デブコン、ロープ、ラバーシート、ホースバンド等の道具はどの船にも積んであるはずなので、一度実際に保管場所を確認して下さい。
デブコンは「Plastic Steel」と呼ばれ、昔から船のパイプ修理用に使用されてきた英国製のケミカル製品です。
同じデブコンでも様々な種類があり、高温で使用可能なタイプや水中で使用可能なタイプ等状況に応じて使い分けます。デブコンは硬化剤を混ぜて使用しますが、硬化剤を混ぜてから数時間で固まり、半日程度でカッチカチになります。デブコン以外にもいろいろな国のメーカーがパイプ修理用ケミカルを販売しています。
ある船でデブコンの在庫を見てみると、主剤は何個も残っているのに、硬化剤の方が在庫ゼロになっていました。これではせっかくのデブコンも固まらず、使用できません。おそらく、誰かが混ぜる割合を間違って1対1の割合で混ぜて使用したため、硬化剤がなくたってしまったのだと思います。主剤と硬化剤の割合は3対1や5対2と同量ではなく、硬化剤は3割程度で十分です。
また、直径15cm程度までの細いパイプの破口の修理には特殊な包帯(商品名:ストップ・イット(Stopit)、マホータイ、Wencon Pipe Tape等)を巻いて応急修理することもあります。この包帯は水に濡らすと、数十秒でカッチカチに固まります。水に濡らしたあと、破口箇所にぐるぐる巻きにするだけで漏洩を止めることができる優れものです。下の写真が修理後の様子です。
バケツの水に包帯をさっとつけて、素早くパイプ破口部に締め付けるようにしながらぐるぐる巻いていきます。するとあっと言う間に硬化し、漏洩が止まります。ただし、数十秒で固まるので、そばにバケツを置いて、要領よくさっと巻きつけましょう。もたもたしていると、巻きつけが終わる前に固まってしまいます。