タンカーやLNG船では着桟後にマニフォールドで陸上ラインと本船ラインを接続しますが、ここでは、LNG船で使用する『マニフォールドフランジ』を紹介します。
皆さんは「Short Distance Piece」を知っていますか? 略してSDP(エスディーピー)と呼びます。LNG船の荷役作業では、まず陸側のLoading Armと船側のマニフォールドを接続します。このとき船陸の接続部の間に挟むのがSDPです。ここで注意することは陸上ターミナル毎にLoading Armの接続部と船側のマニフォールドのフランジ面の相性があることです。
接続部に使用するパッキンのタイプがターミナルによって異なる場合もあり、フランジフェースの表面がツルツルで滑らかの方が好都合の場合もあれば、ザラザラの方が好都合の場合もあります。また、Loading Armをボルトを使用してマニフォールドに接続するタイプと油圧式クイックカップラー(QCDC)で接続するタイプと接続方式にも違いがあります。従ってターミナルによってはボルト穴が無いフランジを要求されることもあり、その場合はボルト穴が無いタイプのSDPを用意して本船マニフォールドに取り付ける必要があります。
船側のマニフォールドラインのフランジは固定されているので変えることができません。そこで、入港するターミナルのLoading Arm接続に適したSDPを取り付けるのです。SDPの仕様でチェックすべき事項は、「ボルト穴の有無」、「フランジ部の厚さ」、「フランジフェースのギザギザ(セレーション:Serration)の有無」、「RF/FF」です。RFとは「Raised Face」の略で、FFは「Flat Face」の略です。FRはフランジ表面が数ミリ盛り上がっているタイプで、FFはフランジ表面が滑らかになっているタイプです。例えばSDPの規格を言うときには、「ボルト穴無し、セレーション有り、フェース厚さ38ミリ FR」と表します。
そして、取り付け作業が面倒でもマニフォールドにSDPを取り付ける重要な目的がもう一つあります。それは損傷防止です。Loading Arm作業時にときどき取り扱いが乱暴になり、本船側のマニフォールドのフェースに当ててしまい、スクラッチ等の損傷が発生することがあります。この場合、もしマニフォールドフランジに直接深い傷が付いてしまったら、簡単には修理することができません。しかしSDPを取り付けていれば、傷ついてもSDPを交換すれば、問題は解決します。このように万が一の場合に備えるためにもSDPは有効なものです。但し、SDPは1個100万円以上と結構お値段が張ります。
万が一、固定のマニフォールドフランジに深い傷(スクラッチ)ができると、いくらパッキンを当ててもガス漏れ、液漏れする可能性があります。接続部からガス漏れ、液漏れすると荷役に影響が出て大問題です。その場合は写真のような装置(Portable Facing Machine)を用いて傷ついたフランジ表面を削り取り、滑らかにすることが可能です。この作業を「Skimmingする」と言います。この装置をゆっくり回転させて表面を削ればすっかり新品のような表面になります。「Skimming」と言えば、カード情報を不正に読み取って盗むこともSkimmingと言います。