毎年実施され、別名「アフロート(Afloat)」とも呼ばれる年次検査(Annual Survey)の話です。
年次検査を実施する場合、本船は受検資料として救命設備や消火設備のリスト、操練記録、警報テスト記録、作動テスト記録、機関部の各安全装置テスト記録等を作成・準備して事前に会社の担当SIへ提出します。
この受検資料の最も重要な役割は、担当SIが検査官と検査手順について打ち合わせをするための資料となることです。担当SIがわざわざ検査官の事務所まで足を運び、この資料に基づいて当日の検査手順や省略できる検査項目を検査官と話し合います。
しかし、勘違いしてはいけないことは、受検資料があるからといって検査当日の受検項目が大幅に軽減されるのは当たり前と考えないことです。あくまでも検査官の判断によります。極端な話、この資料があってもなくても検査当日に全項目を検査すれば良いのです。しかしながら、最近の停泊が短くて忙しい船では充分な検査時間も取れないため、この資料が検査省略の拠り所として役に立つのです。
結果的にこの受検資料は検査官へ根回しするために使用することになります。また、LNG船等特別な船では年次検査も簡略化される傾向にあり、担当SIが検査官の事務所まで行かずに、電話での打ち合わせるに留めることが多く、年次検査資料を用意しないLNG船が多くなりました。
どの船でも受検資料として消火ホースによる放水テストの写真や救命艇の着水・ウォーターカーテン作動テストの写真を受検資料に添付します。停泊中の実施が難しいこれらのテストはこの写真を検査官に見せて、実検査を実施するかどうかを検査官の判断に委ねます。そして、結果的にはある程度の検査項目は省略してもらえます。逆に定期検査等ドックで受検する場合は、検査を行うことに障害がないため、ほぼ全ての項目を実際に検査することになり、この資料を準備する必要はありません。
消火ホースと言えば、あなたの船の消火ホースは大丈夫ですか?ノズルの根元の部分をSeizing Wireでホースに取り付けて固定していますか?このノズルとホースの接続部分に可燃性のロープやテープを使っていると問題です。Seizing Wireがほどけないようにとロープなどで固定してはいけません。当然、消火ホースは消火活動に使用するものですから、可燃物を使用することは許されません。ステンレス・ワイヤーか銅線でぐるぐる巻きにしてしっかりとノズルをホースに取り付けていることを確認して下さい。
ウォーターカーテンと言えば、LNG船では-160℃近い極低温のLNGカーゴが漏洩して、甲板上に流れ出た場合に備えて、荷役中はマニフォールド付近舷外の外板を海水の幕、ウォーターカーテンで覆っています。万一、トラブルにより極低温のLNGの液体が鋼板に触れても低温による脆性破壊が発生しないように保護しているのです。
鋼材の材質にもよりますが、ある一定の低温以下になると脆くなり、鋼材が簡単に破壊されてしまいます。実際にあった話としては、あるLNG船で甲板上にあるN2貯蔵タンクからN2の液体がオーバーフローして甲板上に流れ出し、甲板の厚さ2cm以上ある鋼板が蜘蛛の巣状にぱっくり割れたことがあります。液体窒素はLNGよりさらに低温で-190℃以下です。さすがに分厚い甲板も見事に割れるのです。このような大事故を起こさないためにウォーターカーテンはLNG船にとっては重要な安全設備です。