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航海当直 ア・ラ・カルト(Cross Reference・夜航海・操舵スタンドの設定値)

阪口泰弘阪口泰弘

言うまでもなく、『航海当直』は航海士にとって基本中の基本の職務です。それ相応に出来て当たり前、もしも、信用に足るだけの航海当直の技量を発揮できなければ、船長以下乗組員全員から航海士失格の烙印を押されてしまいます。その航海士の「Basic Skill」ともいえる航海当直について焦点を当て、いくつかの初歩的な話を紹介します。

Cross Reference

「Cross Reference」とは何でしょうか?「Cross Check」とも言います。日本語では「相互参照」です。船位を決定するために使用するRadarやGPSが正常に作動しており、正確な位置を示しているかどうかを確認するためにはRadarで得た船位とGPSで得た船位を比較して判断します。これを船位のCross Referenceと言います。私達航海士は指示されなくても、自然とCross Referenceが出来るようになっていなければいけません。大洋航海から沿岸航海になり、最初に陸岸へ接近するときは必ずCross Referenceを実施しましょう。

漏れる明かり

夜間当直中に居住区前面のカーテンを閉め忘れて室内の明かりがデッキ上をこうこうと照らしていても平気な航海士がいます。皆さんは大丈夫ですか?当然、夜航海では居住区周りの不要な明かりは全て外部に漏らさないようにする必要があります。

さらに、船橋の回転計や舵角指示器がディマーを絞り過ぎて真っ暗にして何も見えない状態でも平気な航海士がいます。これも当然、夜航海に備えて適度な照度になるようディマー調節しなければいけません。単調な航海当直でマンネリ化していませんか?当たり前のことを手抜きしていませんか?今一度、気持ちを引き締めて航海当直をしてください。

最近乗船した船で、夜間もチャートテーブル周囲のカーテンを引かず、ディマーの薄明かりで海図に位置を入れたり、ロブグックを書く船がありました。チャートテーブルを含め船橋内を真っ暗にしているのです。最初は違和感がありましたが、慣れてくるとこれもありかなと思いました。必要なときだけ薄明かりを付けて海図に位置を入れたり、ログブックを書いたりします。チャートテーブル周囲がカーテンに囲まれて明るいと、ついついそこで内職をして見張りが疎かになってしまう航海士が多いはずです。しかし、船橋中を真っ暗にしていると、ちょっとした事務作業も行うことができなくなり、当直者が見張りに集中するようになり、安全性が高まっているかも知れません。ひょっとして船長が航海士に内職させないようにするために船橋全体を暗くしているのかも知れません。

操舵スタンドの設定値

皆さんはAuto Pilotの設定で、Rudder Angle LimitやOff Course Limitが現在何度に設定されているか、すぐに答えることができますか?操舵スタンドに現在の設定値を表示していない船があります。Rudder AngleやOff Courseの設定値は船速の大小や荒天遭遇時に適宜変更します。そのときに現在の設定値が誰にでも直ぐにわかるよう操舵スタンドに掲示しておくべきです。設定値が航海当直に従事する乗組員全員の頭に入っていれば表示する必要はないでしょうが、おそらく今何度の設定になっているかを知らないQ/Mもたくさんいるはずです。ですから設定値の表示は重要です。

ある船でFull Aheadで航行中に台風接近により40ノット以上の強風を横方向から受けて航行するようになり、若い航海士から「Auto Pilotで操舵できません。」と報告がありました。Rudder Angle Limitの設定値を調べると10度となっていました。通常の高速航行中は大舵を取ると危険なので、10度に設定していたのを荒天状況によって15度、20度に設定変更していないためにAuto Pilotで保針できなかったのです。

低速で風の切り上がりが強いときはRudder Angleの設定も当然大きくすべきです。船速や気象・海象の状況によってRudder Angle Limitの設定値を適宜変更しましょう。また、ジャイロコンパスを2台装備している船はNo.1とNo.2のジャイロ示度の差が大きくなるとアラームが鳴るはずです。このDeviation Alarmの設定値も同様な理由から掲示しておく必要があります。

 

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