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見た目ではわからない、「鉄」か「ステンレス」かを見分ける方法

鉄のように簡単には錆びないので重宝され、身近なところにもたくさん使用されている『ステンレス』の話です。

ステンレス(Stainless)は文字通りStain(汚れ)のないという意味があり、SUS(サス:Special Use Stainless)と呼んでいる人もいます。ステンレスは錆びない金属として有名ですが、実はステンレスも少しは錆びているのです。鉄のように目に見えて顕著な錆はありませんが、少しずつ錆びていくものです。

では、ステンレスは鉄と何が混ざった合金なのでしょうか?鉄にニッケル(Nickel)やクロム(Chrome)を混ぜたものがステンレスです。ステンレスにも種類が色々あり、種類によっては茶色くなるほど錆びるステンレスもあります。ステンレスは普通の鉄よりも高温・低温での強度に優れ、皆さんもよく知っているようにLNG船やLPG船の深冷管(Cryogenic Pipe)や深冷バルブ(Cryogenic Valve)に使用されています。

皆さんは鉄かステンレスかを見分ける方法を知っていますか?見た目は全く同じでも簡単に見分ける方法があります。それは磁石です。鉄は磁石にくっつきますが、ステンレスは磁石にくっつきません。鉄は磁性が強いのですが、ニッケルやクロムは磁性が弱く、ニッケルやクロムを多く含むステンレスは磁石にくっつかないのです。但し、鉄分の含有率が高いステンレスは磁石にくっつきます。ちなみに磁石にくっつく金属としては他にコバルト(Cobalt)とニッケル(Nickel)があります。

ところで、ステンレス製パイプの材質表示番号にSUS304、304L、316、316L等がありますが、その違いを知っていますか? 304より数字の大きな316の方がその材質が良く、錆び難いステンレスです。また最後に”L”の記号が付いているステンレスは「Low Carbon」と言う意味で炭素分の含有率が低く、その特徴は錆びに強く、結果としてSCC(Stress Corrosion Cracking)が発生し難いのですが、その分強度が若干弱くなります。したがって、その使い道により304及び316、そして304L、316Lを使い分けなければいけません。ステンレスの価格は通常、304より316が約2割高ですが、価格変動が激しくて価格にあまり差がないときもあるようです。

ここでSCCという余り聞きなれない言葉が出てきましたが、SCCとは「応力(Stress)」「錆(Corrosion)」「亀裂(Crack)」の言葉通り、応力がかかって、その部分が錆びて、そして最後に亀裂が入って損傷することです。「形あるものはいつか壊れる。」と良く言います。ステンレスも半永久ではありません。過度の応力がかかっている状態に塩分が付着すると、ステンレスも著しく発錆して、その部分から疲労破壊を起こすのです。

例えば、LNG船ではマニフォールドの圧力計取り出し用のダボにクラックが入ることがありますが、そのクラック発生原因の多くがSCCです。甲板上に暴露されているパイプには常に応力がかかっており、かつ潮風にさらされているので、塩分により錆が発生します。そして最悪の場合はその錆部分からクラックが発生します。まさにSCCが発生する条件が揃っているのです。したがって、ステンレス(Stainless Steel)製のパイプではなく、鉄製のパイプを使用したほうがクラックが発生しないということもあり得るのです。例えばSIREでは、消火設備であるDry Powder Systemに用いているパイプやボルト・ナットは常にストレスを受けた状態で海水にさらされるのでステンレスでなく、鉄(Mild Steel)の使用を要求しています。「適材適所」という言葉があるように、ボルトやワイヤーに使用される「Steel」と「Stainless」を用途や目的に応じて上手に使い分けることが肝要です。

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