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仕事が上手くいくかどうかは、道具選びで決まる

船内作業するときには様々な道具を使用しますが、その『道具選び』の話です。

「仕事は道具で決まる。」と昔から良く言われることですが、作業に合った適切な道具があれば無駄な労力を使わず、効率的に計画通りの仕事ができます。例えば、手が入らないような狭いスペースにあるボルト・ナットを緩めるためには、専用のスパナを作成すれば、簡単にボルト・ナットを外すことができます。

道具をわざわざ作るのは時間が無駄で遠回りのような気がしますが、結果的に最も近道であることが多々あります。皆さんも今後、何度も経験すると思いますが、困難な作業に直面したときは、その仕事にあった道具を選択し、あるいは手間がかかっても専用の道具を作成することが問題解決の近道となるかもしれないことを頭の片隅に入れておいて下さい。

甲板部で使う便利な道具は沢山あります。パイプレンチ(Pipe Wrench)、ワイヤーカッター(Wire Cutter)、トルクレンチ(Torque Wrench)、ソケットレンチ (Socket Wrench / Ratchet Wrench)、タガネ(Chisel)、プーラー(Puller)、万力(Vice)、シャコ万、ノギス(Vernier Caliper)、けやき針、プラスチックハンマー(Plastic Hammer)、パイプベンダー(Pipe Bender)、パッキン抜き(Packing Hook)、タップ&ダイス(Tap& Dice)、バイスプライヤー(Vise Pliers)等々。

上の道具で頭に浮かばないものがあれば、実際に現場で確認して下さい。例えばボルトが途中で折れて抜けなくなったときには、逆タップを使用して回転方向が逆のねじ穴をあけて折れたボルトを抜くこともあります。また、甲板部には馴染みがないかも知れませんが、機関部では細かな部分の計測道具として、マイクロメーター、ダイアルゲージ、隙間ゲージ(Thickness Gauge)等があります。

ときどき機関士がMy Toolsを持参して乗船してくるのを見かけます。自分のお気に入りの道具を船の仕事で使用するのです。船のものはどうしても古くなり、傷んでいたりします。私から見て機関士が自分の手にしっくりと馴染む道具を使うことにプロのこだわりを感じます。

機関部の仕事は道具が無いと話になりません。ですから機関部の人は、機関士も機関部員もWork Shopにある無数の道具類がどこに仕舞われているかが頭に入っており、必要な道具をさっと取り出して仕事場に向かいます。甲板部も機関部に負けてはいられません。甲板部の道具は、その数こそ少ないかもしれませんが、甲板部員のみならず、航海士もDeck Work Shopや大工ストアー内のどこにどんな道具があるかを把握しておき、必要なときには直ぐに現場へ持ち運べるようになりましょう。

日本人甲板部員が乗船していた時代ならば、ときには厳しく叱られながらも道具の使い方や仕事の段取り・要領を手取り足取り教えてもらえました。年配の甲板部員は職人芸さながらに器用に大工仕事やロープワークをこなしていました。残念ながら今の時代は直接教えてもらえる日本人の先輩と一緒に乗ることは極めて少なく、独学で道具の使い方まで覚えなければならない時代です。

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