船体に描かれたマークは喫水だけではありません。様々な印が表示されています。そんな『船体に描かれたマーク』の話です。
Dry Dockに入渠し、ドック内の海水の排出が完了すると、船体が乾く間もなく清水洗いが始まります。塗装のために清水で外板の潮気(塩分)を除去するのです。清水洗いが終わると、次はサンドブラストで海藻・貝殻や古いペイントを剥がします。デッキ上やドック底はサンドブラストの砂だらけになります。ブラストが終了すると、いよいよ船体塗装です。Touch Upを2度、3度と行い、次に全塗装(Over All)です。全塗装もその仕様により塗料の種類、塗膜の厚さ、塗装回数が決まっています。
船体外板の塗装が完了すると、次は船体外板のマーキング類の塗装です。船の周囲にはたくさんの種類のマークが表示されています。例えば、Load Line Mark(Plimsoll Mark)、Draft Mark、Bulbous Bow Mark、 Thruster Mark、Tug Mark、Manifold Mark、Tank Mark、船名、船籍港、IMO番号等々。これら全てのマークが正確に白色ペイントで塗装されていることを確認するのは3/Oのドック中の仕事です。ドック作業員によるマークの塗装が完了すれば、3/Oは船体をぐるぐる回って各マークがきれいに塗装されていることを確認します。
「Tank Mark」はタンクとタンクの境界を示すマークのことです。例えば下写真(左から2番目)はFOタンクの境界線を表示しています。他にもバラストタンクやカーゴタンク等すべての区画の境界線を外板に表示しているのです。「Manifold Mark」は下写真(一番左)のようにマニフォールドのパイプ位置を示すためにマニフォールド下の外板に表示されている丸い印のことです。小さな船や陸上からマニフォールドのパイプ配置が見えなくても、この印を頼りにホース接続作業をすることができます。
ドックと言えば、ドック作業が全て完了した後に、造船所から船側へ完工書が手渡されます。ドック中に実施した作業内容がびっしりと書かれており、枚数にすると数百ページにも及びます。当然ですが、造船所が完工書を用意するのはドックを出港する直前です。そのためSea Trial等で忙しいときに完工書を手渡されるので、主任者、船長・機関長が慌ただしい中で急いで各作業内容を確認してこの完工書にサインをします。
ドック中は膨大な数の工事を実施しており、追加工事やキャンセル工事が多く発生しているので、この完工書の記載内容に多くの間違いがあります。それを主任者はきっちりとチェックして訂正する必要があります。そして、船がドックを出港した後、本船担当SIは船が最終的に確認済みの完工書に基づいてドック側と最終的なドック費用の清算をすることになります。本船の乗組員は出港すれば、ドック作業は終了ですが、SIの仕事はまだまだ続くのです。