漂流する超大型タンカーの救出記録 12月13日(金)16:50〜NHKニュースシブ5時で放送

船種別の運航実態と注意点:LNG船・コンテナ船・自動車船

アバター森山 和基

こんにちは、森山和基です。

小職は、日本船長協会に在職中、船舶工学系の研究者や造船所方々に対して、各船種の運航実態と運航上注意すべき点について述べる機会を得ました。

述べた内容は、船舶運航に関する研究の材料に既に利用されていますが、さらに多く方の研究のヒントや、これから船長の実職を取ろうとする航海士の方にも役立ててもらうため、内容を再編集し、2回に分けて紹介します。

小職の経験上の話ですが、ご覧いただいた方の何かのヒントになれば幸いです。第1回目はLNG船、コンテナ船、自動車船について述べます。

LNG船

積み荷航海、バラスト航海とも、毎航ほぼ同じコンディションになります。また、船体構造的にも相当な補強が施されておりますが、昨今のメンブレン船は、スロッシング影響を避ける積み付けが必要です。

最も気をつける点は、ローリング、ピッチング等の船体動揺です。GMは、満船において5m程度、空船においては10m程度となります。横揺れ時の過大モーメントは、船上、特に船内居住にあたっては、大変に危険です。
貨物管理上も満船時の横揺れは、タンク圧管理が困難となりますので、ローリングを極力避けるようにします。ただ、場合によっては、片舷20度程度まで堪えることもありますが、周期が早く、あまり気分の良いものではありません。

LNG船は、この他にも商売上の制約や受け入れ基地側の制約等が多く、実際の荒天避航を比較的早期に実行することが多いと思います。また、低気圧等にも十分な注意を払っております。積み荷状態で低気圧にあたると、タンク内の見かけ上の圧力が上がり、安全なタンク圧管理に支障が出ます。早めに安全海域を選択し、航海計画を変更して出来る限り安全な海域への避航を考慮します。

LNG船の場合、貨物であるLNG(液化天然ガス)を燃料として使用できますので、こうした安全サイドの早期避航が可能ですから、むしろ早期に避航(計画変更)する方が賢明であると考えています。もちろん、こうした変更は、受け入れ基地側の準備や操業にも大きく影響しますので、詳細な情報の共有と、早期決断が鉄則です。

コンテナ船

コンテナ船のオペレーションは、ほとんどコンソーシアムで運航されていますのでETA(到着予定時刻)維持は重要です。一方で、大型化した昨今の船型では、環境保護の観点から、13~15ノット程度の低速運航を実施しています。

この速力というのは、通常航海モードとしては、ほぼ最低速力となり、メインエンジンに関して、いろいろな制限や特別なオペレーションを気にしなくてはならない領域でもありましょう。一昔前まで、高速での航海時の効率を考慮してきたコンセプトとは逆の発想で機械的な考慮が必要です。

例えばターボチャージャーなど、低負荷では逆にサージングを起こすことから、航海開始前に事前に使用機の数を船長と機関長とで相談し、決定しておく必要があります。これは、航海途中での出力変更があった場合には、一旦メインエンジンを停止するなどロスを伴うため、航海を通じた計画と検証が必要です。こうした部分も日進月歩で進化しており、機械的改良も進んでいます。

運航にあたっては、上記のような面も考慮しておく必要がありますが、従来の発航前の検証事項について、最も気にすべきは船体強度です。最近の大型コンテナ船は、積み付けのバリエーションが増えた分、強度的な脆弱性が非常に複雑になりました。

つまり、ホールド内、ハッチ上といった部分的な積み付けの可能性が増えた分、特にねじれモーメントが厳しくなりました。従来通りの計算コンディションでの確認は勿論ですが、実際にリアルタイムの船体強度を航海中にモニターすることが可能になりました。従って、(1)航海上の危険な状態としての数値を自身が持っておくこと、(2)最近は予報精度も上がっているので、そうした自然環境の変化と予測に気を配ります。

具体的な目安として、波高5mを超える海域には進入しないようにしています。また、大型コンテナ船となり、長さが300mを越え、喫水が15m前後になると、レーシングについては、さほど影響を感じることはありませんが、ローリングについては、荷崩れをしないように、横揺れが10度以内の揺れに収まるよう、速力を考慮しながら波向きを見て針路の判断をしました。適正GMとして2.0~3.0mを確保して、横揺れのモーメントを低減していました。過大GMは危険ですが、定常的に積み荷がある状態なので、ほぼ適正GMでの航海が可能です。ただ、航路換えなどの場合、全量揚げ+沖待ちのケースも考えられますので、低気圧の接近する荒天時は、過大加速度影響などの注意は必要です。

自動車船

PCC(自動車専用船)は、受風面積が大きく、強風時は計画針路と真針路に大きなズレが発生して、斜航することになります。また、速力低下や機関への影響を考慮する必要があります。

荒天時は機関への影響に配慮して、トルクリッチにならないような速力まで減速する必要が出てきます。また、喫水は6~8mと浅いですので、レーシング(プロペラの空転)も避けなくてはなりません。PCCの場合、あまり過大GMとはならないのですが、やはり横揺れは10度以内となるよう考慮します。

また、荷物自体が軽量な為、GMは過小化するケースが多くなります。このことは、旋回時に外方傾斜し、そのまま傾斜がなかなか戻らないことになります。従って、この外方傾斜が戻らない状態の中、大きく傾斜舷に舵を切ると、傾斜がなおさら増長されることになり非常に危険です。そのため、GMが過小な場合の舵の取り方には注意が必要です。積み荷である完成車は、1本の強度が2トン程度のクラスパー(ベルト)を6~8本で固定していますので、横揺れは大敵です。大きく舵を取ることは避けています。

風圧によって風下に圧流されるPCCの様な船型では、風上に船首を向けると、船速が落ち、出力が出ない分、更に風下に落とされることになります。また、避航する際、周囲に十分な安全水域がないと、風潮流の影響は大きく危険です。強風時や狭水道での操船などでは、危険を伴う特殊な船型と言えるでしょう。
強風時の操船では、十分な距離で避航できると思っていても、実際に航過する際には、相手船に接近するケースもありますので、最接近距離の確認は重要です。


※写真と本文は無関係です。

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