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海難事故から学べ!-4- 荷役中の鉱石船の離岸・座洲

圧流により係留索が切断した鉱石船の座礁事故の話です。

ケープサイズバルカーが豪州のPort Hedlandで鉄鉱石の積荷中に係留索が切断し、座洲に至たりました。当時、岸壁工事のために船尾係留索を変則的に取り(スターンラインを取っていない状態。)、さらに付近海域にタグが待機していました。

また、当日は大潮で6~7mの潮位差がありました。積荷役終了前に船体が少し岸壁から離れたので、甲板部員が船首側の係留索を巻き締めたところ、船尾側が急激に岸壁から離れ始め、次々と係留索が切断し、バース沖の浅瀬に座洲してしまいました。その結果、プロペラが曲がり、舵が捻じれる損傷が発生しました。幸い事故を起こした船はエスコート船を付けて自力で日本まで航行することができました。

風圧力以上に潮流力には注意が必要です。「1ノットの潮流は風速20ノットの風圧力に相当する。」と言われるぐらい、潮流の力は無視することはできません。また、当時は低潮であり、かつ満船状態なのでUKCが非常に小さくなっており、より潮流の影響を強く受けていたはずです。係船索に均等にテンションがかかっており、ブレーキがしっかり効いている状態だったら、一本ずつ係留索を調整することに何ら問題はなかったはずです。

しかし、その船の各係船ウィンチのブレーキ状態はそれほど良くなかったのかも知れません。その結果、強い潮流力により係留索のバランスが崩れて、船が岸壁から離れてしまったのでしょう。係船ウィンチのブレーキドラム部の発錆によってブレーキ力が十分でない船も多いはずです。近年はブレーキドラムにステンレスを使用している船もあり、問題ないかも知れませんが、ブレーキドラムの状態が良くない古い船は係留時の強風や強潮流には十分な対策・注意が必要です。

ポイントを整理すると、以下の5点が今回の事故防止に必要な対策です。

  • 適切な係留索の配置とすること。
  • 風・潮流等の外力を正確に評価すること。
  • 荷役中は適切な当直体制・人員配置をすること。
  • 係留索の張り合わせ・調整を適切に行うこと。
  • タグボートの手配等リスクに対する措置を早期に取ること。
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