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船にあるマジックハンド? 遠くまで届く魔法の手

現場にある『バルブを遠隔で動かす仕組み』の話です。

航海士は「リーチロッド(Reach Rod)」や「ユニバーサルジョイント(Universal Joint)」がどのようなもので、どこに使われているかを知っておく必要があります。例えば、Draft Gauge用船外弁はバルブハンドルが甲板上にあり、リーチロッドを介して10メートル以上離れた場所にある船底バルブにつながっています。リーチロッドやユニバーサルジョイントのおかげで遥か10m以上先にあるバルブの開閉操作ができるのです。

この甲板上のバルブハンドルの回転をバルブ本体まで伝える棒のことを「リーチロッド」と呼びます。油圧による遠隔装置ではなく、言わば機械仕掛けの遠隔装置です。そして、船底まではかなりの距離がある場合、リーチロッド 1本では届かないため、数本のリーチロッドをつなぎ合わせる必要があります。このときリーチロッド同士は上下一直線ではなく、ある角度を持ってつながっているので、特殊な継ぎ手が必要となります。デッキ上のバルブハンドルの回転を斜めの棒に伝える必要があるのです。そのための継ぎ手として「ユニバーサルジョイント」が使用されています。

多数のバラストタンクのうち、Draft Gauge用船外弁が内部にあるバラストタンクを検査する機会があれば、甲板上のバルブを回して船外弁が実際に動く様子を一度確認してみて下さい。古い船ではこのリーチロッドやユニバーサルジョイントの腐食や固着のため、多くのバルブが動かなくなっています。固着させないためには、適当な間隔で定期的に動かすことが必要ですが、Draft Gauge Valve等は案外忘れられた存在になっており、固着しています。

船外弁と言えば、航海士が知っておくべき船外弁として「ストーム・バルブ(Strom Valve)」があります。ドック中にC/Oが3/Oに「Storm Valveの状況・復旧作業を確認しておくこと。」と指示がありますが、皆さんはC/Oの指示通りに対応できますか?「Storm Valveって何?」では話になりません。ストーム・バルブとは機関室ボットムにある居住区排水・汚水配管(Soil Pipe)の船外排出ラインの逆止弁(Non-return Valve)のことです。

では、Storm Valveの位置・種類を確かめたことがありますか?

あるC/OがStorm Valveを航海中に開けようとしたというから驚きです。Storm Valveは海面下の位置に設置されているため、ドックの機会にしか開放整備できない重要なバルブです。海面下にあるバルブを航海中に開放するとどうなるか、想像すれば恐ろしいころです。Storm Valveの開放整備のドックオーダーは機関部から出されているかも知れませんが、水回りは航海士の担当です。航海士は当然、部屋の洗面所や便所から船外排出口までのパイプ配管の状況を把握しておく必要があります。

最後に船ならではの汚水ラインの話です。病室の便所からの排水パイプだけが他の部屋の便所の排水パイプと別系統となっていることを皆さんは知っていますか? なぜ病室の便所だけ別系統となっているのでしょうか?隔離が必要な伝染病患者が発生した場合、その便を他者の便と一緒に船外へ排出するわけには行かない場合があります。そのため、病室の便所からのパイプだけは他のパイプから独立しているのです。

通常の居住区の汚水(便所排水)ラインは、

  1. そのまま船外へ直接排出するライン
  2. 汚水処理装置を通じて浄化してから船外へ排出するライン
  3. 貯蔵タンクへ貯めるライン

の3系統があります。これとは別に病室からの排水ラインが船には必ず設置されています。

ですから、一般居住区からの便所排水を船外に排出しながら、病室の便所排水だけ貯蔵タンクに溜め込むことができるのです。

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