バルブを油圧で『遠隔操作する仕組み』の話です。
アクチュエーター(Actuator)とアキュムレーター(Accumulator)、英語では同じような単語の機器ですが、その目的も機能も全く別物です。アクチュエーターは「制御信号を実際の動きに変換する作動装置」です。代表的なものとしては油圧バルブの頭部に付いているアクチュエーターです。
電気信号をバルブの開閉動作に変換します。コンソールのバルブスイッチを操作することにより、電気信号によって電磁弁を動かし、作動油の流れを変えることによりアクチュエーター内のピストンを動かし、その動きをレバーを介して弁体に伝えてバルブをOpen/Shutさせる装置です。
このバルブ・アクチュエーターには工夫がこらされた興味深い機能が付いています。それは「Locking Mechanism」です。下図のようにFull Open位置ではレバー内のピンに遊びがありませんが、Full Shut位置では遊びがあります。Full Open位置ではピンの動きが直ちにレバーに伝わりますが、Full Shut位置では遊びがあるためにピンの動きは直ぐにはレバーに伝わりません。
Full Shutから少しぐらい動いてもバルブはオープンしません。これはバルブがFull Open位置から少しぐらいShut方向へ動いても大勢に影響ありませんが、バルブ本体の振動やシリンダー内の残圧によってFull Shut位置からピンが少し動いてバルブが微開となっては漏洩が発生して大問題です。そのため何らかの理由によりアクチュエーターにOpen方向の力がかかっても、ピンに遊びを作って、ピンが少々働いても遊び分はバルブが開かない仕組みになっているのです。
アキュムレーターは日本語で言う「蓄圧器」です。「器内に高圧の液体を貯えておいて、必要に応じてその圧力を伝達して仕事を行わせる装置」のことです。代表的なものにLNG船に装備されているESD System用のアキュムレーターがあります。電源喪失トラブルで作動油圧力が低下してバルブが動かなくなっても、N2で高圧に保たれたバルーン(風船)による力で作動油に圧力をかけてバルブを動かす(閉める)ことが可能です。
アクチュエーターと切っても切れない関係にあるのが電磁弁(Solenoid Valve)です。仕組みを簡単に説明すれば、Open側またはShut側の電磁石に電圧をかけて励磁してプランジャー(棒)を動かし、作動油の流れを変えることによってアクチュエーターをOpen方向またはShut方向へ動かします。また、タイプは違いますが、電磁弁は汽笛や機関室内の多くの機器でも使用されています。
以上の説明でアクチュエーターとアキュムレーターの違いが明確になったと思います。アクチュエーターは「作動装置」で、アキュムレーターは「蓄圧器」です。似て非なるものです。