船で使用されている『Wire Clip』の話を一つ。
Wire端を固定するために端末加工をする方法として、Eye Splice、Socket、Wire Clip等多くの種類があります。金属をかしめる「Mechanical Splice」は船の乗組員では作成できませんが、Hand Spliceは勿論のこと、ソケット加工もケミカル・硬化剤等作成キットがあれば乗組員によって比較的簡単に作成できます。
参考
Hand Splice Eye – Type HS-1-1Jack Rubin & Suns, Inc
GangwayやLife BoatのWireの端を固定するためにSpliceではなく、Wire Clipが使われることがあります。皆さんはWire Clipを使ってWire端末を固定したことがあるでしょうか?昔の日本人甲板部員達はあっという間にWireにEye Spliceを入れたものです。しかし、私達航海士では簡単にSpliceは入れられません。(私はお目にかかったことがありませんが、航海士の中にも甲板部顔負けでEye Spliceを素早く入れることができる人がいるかも知れません。)そこで登場するのがWire Clipです。あまり太いWireではWire Clipを使用しませんが、径16mm程度までのWireならWire Clipで代用可能です。
Eye Spliceを入れるためには、Wire端のストランドを1本ずつにばらし、その各ストランドをWire本体に差し込んで継ぎ合わせていきます。もちろん今の外国人部員もWireの Eye入れができるでしょうが、WireにEyeを入れる時間的余裕が無いときには、Wire Clipが代用できます。また、私達航海士自身がEye Spliceは無理でもWire Clipであれば、確実にEyeを作ることが可能です。
ここで注意しなければいけないのが、Clipの個数と取り付ける向きです。必要な個数は16mm以下のWireの場合には、4個程度を等間隔に、それ以上のWireになると5個を等間隔に取り付ける必要があります。
付ける向きはUボルトをどちら側から差し込んでも良いのではなく、ちゃんと正解があります。Uボルトの向きを互い違いに付けるのが正解と思っている人もいますが、間違いです。正解は上図の通りWireのEnd側を折り返した短いWire端側からUボルトを差し込むのが正解です。
逆方向からUボルトを差し込んで使用すると強度が50%以下になることもありますので、十分に注意が必要です。みなさんも自分の船のWire Clipの向きを一度点検してみて下さい。意外と間違った方向からUボルトを差し込んでいるかも知れません。ちなみに、合金Socketで適正にエンド加工した場合の強度を100%としますと、アイスプライスの場合は75〜95%、Wire Clipの場合は80〜85%しか強度がありません。Wire Clipは簡単に使用できるという長所がありますが、強度が劣るという短所があるので、注意してください。