甲板作業で使用する『便利な道具』の話です。
皆さんはグリース注油器(Grease Lubricator)を知っていますか?グリース注油器は圧縮空気(甲板雑用エアー)を利用してMooring Wireへグリースを高圧注油する道具です。利点は空気圧によりWire Ropeの芯までグリースが行き渡ることです。しかし、この道具には一長一短があり、この注油器を使いたがるボースンと使いたがらないボースンがいます。
長所は高圧で注油するので内部にまでグリースが行き渡り、Mooring Wireの油分が長持ちして防錆効果が高いことです。また、古いグリースやゴミを自動的に落としてくれるので、新しいグリースが綺麗に塗布できます。スクレーパーで古いグリースやゴミを落としながらのグリース塗布を手作業でするのは大変です。一方、グリース注油器の欠点はグリースの流量(圧力)調節が難しくて、均一にグリース塗布するのが困難なことです。圧力が強すぎるとグリースが注油器端からあふれ出てきてDeck上にボタボタと落ち、非常に効率が悪く、思ったほど均一にグリースをMooring Wireへ塗布することができません。結局、手でグリースを塗布したほうが、早く、綺麗にまんべんなく塗ることができるかも知れません。
もう一つ便利な道具の話です。高圧洗浄機(High Pressure Water Jet Pump)を使用したことがありますか?高圧の清水がノズルから噴出され、デッキ上の錆打ち作業にも使用することが可能です。水洗いと錆落としが同時にできて、水分が乾いた後にペイント塗装すればOKという便利な道具です。しかしこの便利な道具にも欠点があります。それは時間がかかりすぎることです。固めの錆びを落とすにはノズルを一点に集中してかなりの時間同じ箇所に当てていなければ錆びが落ちません。時間がかかり過ぎるため、効率が非常に悪くなります。
高圧洗浄機の他に錆を落とす便利な道具としてラストリムーバー(Rust Remover)とうケミカル(薬品)があります。色々な商品名があり、少々高価ですが、錆汁で茶色くなった汚れを除去するための優れものです。錆汁がたれて茶色くなった表面にモップ等でラストリムーバーを塗りつけるだけで、手品のようにあっという間に錆茶色が落ちます。錆茶色が落ちて綺麗な色になったら、後は清水洗いするだけです。ペイントを塗るよりも簡単に錆茶色を除去できます。但し、このケミカルでは大きな錆を除去することはできません。
原液を塗ると効果抜群ですが、その分ペイント成分も溶かすため、少し薄めて使用したほうが良いかも知れません。但し、あまり薄めすぎると効果がなくなり、錆が落ちません。また、洗い流した水が甲板上のペイントを変色させることもありますので、使用する場所や時期に注意する必要があります。せっかく錆が落ちてきれいになっても、その周りが変色して汚くなっては台無しです。