『トランシーバーの上手な使い方』の話です。
入出港スタンバイ作業や荷役作業で情報交換や意思伝達するために必要不可欠なトランシーバー。強風下でトランシーバーを使用するときに気をつけることは何でしょうか?風の音を喋る声に入れないことです。トランシーバーで話をするときに風の影響をなくすことが常識です。甲板上では風が強いこともしばしばあり、強風の中でトランシーバーで話しても風の音が雑音となり、相手には何を言っているかさっぱりわかりません。
風を防ぐために少し手をかざすか、風下を向くか、それでもダメなら、風を遮るところへ移動して話さなければいけません。この動作はちょっとしたことですが、緊張した現場や忙しいときにはうっかり忘れたり、余裕がなかったりしてなかなか出来ないものです。トランシーバーの使い方一つでもその人に余裕があるかどうかがわかります。余裕のある人は必ず、風を遮ってからトランシーバーを使用しています。船長や他の航海士のトランシーバーから風の音ばかり聞こえてきたら、「ああ、今余裕が無いのだ。」と配慮して、「風の音が入っているようです。もう一度お願いします。」とアドバイスして下さい。
トランシーバーで喋るときは、口元から10cm程度離してください。時々トランシーバーから聞こえてくる音声が鮮明でなく、非常に聞き取り辛い声の人がいます。その人の声質に問題があるのなら、仕方ないかも知れませんが、その聞き取り辛い理由の多くがトランシーバーに口を近づけすぎて喋るためです。最近のトランシーバーは高性能なので、少々トランシーバーから口を離して喋ってもきれいな音声を相手に伝えることができます。従って、意識的にいつもより若干多めに離して話せば、あなたの声も鮮明で聞こえやすい美声となります。もちろん、口元からトランシーバーを離し過ぎると蚊の鳴くような声になるので、適度な距離を保って喋りましょう。
トランシーバーの通話テストで「How do you read me? over」「I read you loud and clear, over」というやり取りをします。日本語に訳せば「こちらの感度いかがですか?どうぞ」」「感度良好です。どうぞ」となります。ここでは「感度良好」と訳していますが、正確に表現すれば「感明良好」です。たまに日本人船員がVHFで「感明良好です。」と言っています。“Loud”の意味は「大きな声」であり「感」に該当して感度良好のことです。
“Clear”の意味は「声に雑音が混ざっていない鮮明さ」であり、「明」に該当して明度良好のことです。別の言い方をすると、「感度良好」は「Gain」が良好ということで、「明度良好」とは「Tune」が良好という意味です。従って”Loud(大きな声)”&“Clear(聞きやすい)”、すなわち「感明良好」と言えば、申し分ない大きさで聞きやすい声ということになります。
入出港スタンバイ作業時にトランシーバーを使っていると周囲の他船と混信することが頻繁にあります。もし、チャンネル数がたくさんあるトランシーバーなら、数字の大きなチャンネルを選択すれば良いでしょう。人間の心理なのでしょうか、どんな人も無意識に数字の小さい1チャンネルや2チャンネルを使いたがり、数字の小さいチャンネルは混信する確率が高くなります。
できれば4チャンネルや5チャンネルを使用したほうが、圧倒的に混信する回数が減ります。乗船している船が1チャンネルを使用しているようであれば、是非5チャンネルを使うよう船長に提案して下さい。でも、皆が同じ考えで5チャンネルを使い始めたら、結局は一緒ですが・・・・・